フコウ(戸口、ホグ)。私たちの住民登録制度と同じ様な
中国の居住管理体系だ。去年の春延邊で出会った脱北少女は
住民登録を手に入れるのが夢だと言った。北朝鮮に近い
中国国境地帯では住民登録が脱北者を探し出す道具となって久しい。
中国は1958年から戸口制度を導入し国民の居住移転を
制限してきた。都市に押し寄せてくる農村出身者たちも
都市の戸口が無いと身分保証、保険、子女教育等の
恩恵が受けられない。中国人たちでさえこの状況なので
脱北者たちにおいてはなお更の事だ。
そのとき出会った少女は97年の末、豆満江を渡ってきた
と言った。今年19歳、13歳の時、故郷を越えたいわゆる
乙女だ。当てもなくさまよう生活6年にあまりにも疲れはてたのか
体はやっと小学生くらいであった。けれどその間、現地活動家たちの
助けによって中国語を習ったお陰で飲食店に就職し、従業員と
なり寝食を解決してきた。その間の事情を問うと悲しみがこみ上げて
きてしばらくしゃくりあげた。農村で隠れて暮らしたというだけで
思い出すのもいやだという表情なので話題を変えた。何かしたい
ことがあるの? と聞くとすぐ顔が明るくなって元気そうに話す。
「一日も早くお金を儲けて戸口を買いますよ」と。
戸口さえあれば脱北者の身分をまぬかれるのは勿論、
何であれ堂々と(合法的に)することが出来るのだ。後で
聞いたところによれば1万5千元(225万ウォン)くらいの
賄賂を使えば戸口得ることが出来るといったけれど少女の
月給はやっと450元、大部分を貯金していると言ったが大金を
いつ用意できるか心配していた。
少し前、その少女を世話してくれた現地活動家から悲報が
飛び込んだ。昨秋、中国公安に検挙され北朝鮮に強制送還
されたというではないか。あの時戸口を買うお金を支援して
いたならばという不憫さと自責の念が先にたった。まずは
去就も安全で自立的な意思も強いからしばらく様子を見ることにし、
違う支援事業に力を集中させようという意見に賛成したことが
結局少女を死に追いやってしまった。
外信によると中国政府は戸口制度をすぐ廃止するようである。
中国に居住移転の自由時代が開けるわけだ。しかし中国各地を
さまよう脱北者たちに戸口制度廃止は絵に描いた餅だ。戸口に
変わる新しい居住登録管理制度が作られるためである。
それはそれとして、今あの少女はどうしているのだろうか。
寒風が吹きすさぶ中で「戸口 買いますよ」と言った少女の
希望に満ちた声が耳から離れない。
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