北からの難民を考える ヨベルの年連帯
消息誌 3号
Jubilee Coalition for North Korean Defectors
巻頭コラム
延辺通信 2
特別寄稿詩 白頭よ、長白よ!
特別寄稿文
江沢民の朝鮮民主主義人民共和国 (以下北朝鮮)訪問と韓・朝関係

北朝鮮脱出者インタビュー** ある元教師の北朝鮮脱出手記(2)
お知らせ/連絡先

北朝鮮難民チョヨンネ(‘ヨベルの年の連帯’事務局長、国民日報 論説委員)
巻頭コラム

半世紀も耐えてきたのに

ひどい残暑が猛威を振るっている。地球温暖化現象のせいだと
いうけれど、季節の変わり目の落ち着きなさのためか、心穏やか
ではない。いつまでも夏であるかのように振舞っているかんかん
照りもそうだけれど、天気を相手に愚痴をこぼす人を見ても
いらだたしくなるのは同様である。

私たちは待つことにそれほど慣れてはいない。それどころか、
レストランで催促するのが自分のなすべき仕事だと考えているのが
わたしたちである。ぐずぐずしている夏も嫌いで、早めに
やってくる秋にもいらいらするという私たち。季節こそ時がくれば
自からきちんと正確に変わればいいものを、どうしてそうならないのかと
いう私たちは、もっぱら性急な性格そのままに、たえず
不満のみを口にする。

南北問題においても例外ではない。事実、今、南北間には
いらいらする「待ちの時」が続いている。3月(2001年)に
開かれることになっていた南北大臣級会談が急に無期延期
され6ヶ月ぶりにやっと再開されるという、そんな仕方もする。
あれほど感動的であった2000年6月の南北頂上会談の
熱気は何処へ消えてしまったのか、南北問題に対する
期待感は大きく萎縮している。もったいない話だ。

最近中央日報が調査したところによれば、南北問題に
対する国民の見方が1年前に比べて大きく保守化
している。例えば'統一しなければならない'とする
主張に、昨年は80.6%が賛成したが、今年は71.8%に
減った。'統一時の税負担'問題に対しても'負担したく
ない人'が昨年の40.2%から45%に増えた。特に、
現政府の太陽論に対する共感度は昨年の73.5%から
48.4%へと激減した。ひいては、金正日国防委員長の
ソウル答礼訪問に、1年まえは91.4%であった賛成が
今年は75.4%に減少した。

勿論、今でも統一を当然とする論が多数(71.8%)をしめ、
南北経済協力が相互利益をもたらすだろうという意見が
過半数(52.5%)を占めているなど、南北関係に対する
期待値は非常に高い。それ故、最近南北問題から
醸し出されている不満は昨年の3月以来小康状態に
陥っている南北対話、国内政治の不安定、経済沈滞の
長期化兆候など、多様な不安定要因によって醸し
出された一時的側面が強い。

事実我々にとって南北問題はいまやっと数歩を歩み
だしたに過ぎない。南北のトップが1度会ったからと
いって、過去50年の南北間の桎梏と対立から
生じた全ての問題が一時に解決されるだろうと
考えるならば、それは見込み違いである。

依然として我々には超えなければならない山が
超えてきた山より多いい。 政治的にこそあの
頂上会談は民族史に一区切りをつけたけれども、
細部の論議においてはむしろ以前よりも多くの
もつれを生じさせる可能性もある。以前の敵対関係に
おいては論議さえできなかった部分について
対話を始めるのであるから、それはある意味で
当然のことといえる。
         けれども、これまで半世紀も耐えてきたのに、
南北頂上会談後やっと1年余りが過ぎた時点で南北会談に
対して悲観論が噴出すれば、一体どうなるというのか。
分断という暗黒の中で、それでも、我々は統一の種を
育ててきたのに。いまこそ、うんざりしながらも希望を
すてなかったあの時をよみがえらせ、関心を寄せ、
余裕ある「待ちの姿勢」で南北問題を見守らなければ
ならない時である。厳しい残暑が猛威を振るっていても、
実は、秋はもうすぐ側まできているではないか。 
ヨベルの年

延辺通信 2
北朝鮮脱出者の一般的状況

(‘ヨンビョン通信’はヨンビョンから直接送ってきた
北朝鮮脱出者についての現状記録で、今後この
消息誌に毎回掲載するものである。保安関係上
筆者は勿論正確な地名、人名、日時等を明らかに
しないことを原則とした。以下の文中[]表示は
‘ヨベルの年連帯’が付記したものである。編集者注)
17歳の脱北少年の手記である。特定地名と日時は
明らかにしないことを原則とした。以下【 】表示は
‘ヨベルの年連帯’が付けたものである。編集者注)
最近中国は、北京を始めとした全地域で居住民が 自分の居住地を離れて他地域へ行く場合には 臨時居住証の発給を受けなければならないとする、 新しい住民管理方法を実施しています。【6月10日 (2001年)から実施】 また戸籍及び身分証も再び 点検しています。1ヶ月以内他地域に留まる場合には 臨時居住者臨時登録証を提出しなければなりません。 その臨時登録証の有効期間は1ヶ月です。8月1日から、 それまでの臨時居住証はすべて廃止されました。 特に延辺では全ての家を漏れなく訪問し居住者の 身分証の調査をしています。この地方の身分証で なければだれかれを問わず、まず、派出所に連行します。 職業をもたない人に対してはいっそう厳密に調査 しています。いわゆる3無【身分証、戸籍、職業が ないこと】に該当する人たちを綿密に捜し出しています。 それ故、北朝鮮脱出者の状況は最近とても困難に なりました。その上、このごろ中国政府は、中国が あの6・25戦争のために半世紀近くアメリカから 憎まれ阻害されてきたという世論を造成しています。 朝鮮戦争、あの悩ましく悲劇的な【両国間の】衝突が なかったならば人々は重い負担を背負わなかったで あろうという感情を明かしている。 (延辺日報6月2日付け) 当然なことですが、中国当局は北朝鮮脱出者に 対して決して肯定的ではありません。中国政府は 犯罪対策の一環として、身分証、戸籍、職業が なくさすらう3無者に対して厳しい捜査検挙を始めたのでは ありますが、重要なことはこれを通して北朝鮮脱出者を えりだそうとする意図です。 その渦中で最も胸が痛むのは既に中国へきてから 何年にもなる女性たちの境遇です。彼女たちは、 北を脱出した後自分たちの身分を隠すために中国人と (朝鮮族を含む)事実婚関係を結び子供までもうけて 生きてきましたが、今度の捜査検挙にひっかかり、 そのまま北朝鮮に追放されています。その過程で 捨てられる子供たちがでてきています。子供たちは 戸籍も何もない天涯の孤児としてほっぽりだされて います。赤ん坊から3-4才、大きくて5-6才に成った 子供たちです。北朝鮮脱出者や朝鮮族がどうにか こうにかその子供たちの面倒は見ても、捕らえられて いった母親たちはほとんど帰ってこられないのが 実情です。 北朝鮮に捕らえられていった女性たちは中国の 種を孕んだということで、他の脱出者よりも多くの 憎しみを買います。国が滅びれば女性と子供が 一番悲惨だという言葉がありますが、本当に、ここで おきている出来事はその言葉を証明して余りあります。 特に、300年ぶりといわれる北朝鮮の干ばつは、 そうでなくても大変な北朝鮮の人々に、どうしようも ないほどの困難を与えました。北朝鮮のひとびとは、 白いぼろ布をかぶせられたように、血の気が ありません。豆満江付近ではいともたやすく殺人事件が おきており、中国公安では北朝鮮の人たちが国境近くで 強奪をして仕出かした殺人だと決め付けています。 そのため、近頃ではバスも北朝鮮の人に似ていると 乗せてくれません。 一睡たりともこころおきなく眠ることができず、仕事をしても 脱出者だといって金一文受け取れない状況のなかで、 彼らの面倒をみ、安らかな眠りを保障し、食べさせるのは まるで007作戦のようです。特に、彼らが病気に かかったときには面倒を見るのが難しくなります。けれども 彼らの困難に比べれば、私たちの困難は何でもありません。   ヨベルの年

特別寄稿詩
白頭よ、長白よ!
白頭よ 長頭よ!
わが祖国(北韓)で白頭としてよく知られた
人民の心の中に 想像の伝説として 夢の名山として
どれほど登りたかったか
韓民族の魂がこもった歴史の山であったか

わが祖国にそそり立つ
お前の名 お前の気立て
遮られて久しい
独裁者の偶像崇拝が氾濫する所で
お前は ただ一人の人間の象徴へと堕落し
一人の人間の名誉のために
美しさまで失ってしまったのか

白頭が本来の気性を失って
独裁の代名詞にまで堕落した
我らの誇りではなくなり
独裁の道具へと転落してしまった

それでもお前を恋い慕うわが民族
お前に会うために
数千里をめぐりめぐって来
いまさらながら 悲しみの中でお前の名を呼ぶ
真っ先に 祖国の痛みが思い浮かぶ

韓半島の北部に
高く高く聳え立ち
韓民族の痛みを黙々と積もる怒りの中で
そのように沈黙しなければならなかったのか
お前、長白よ、白頭よ、

恋しい白頭よ!
お前の頭の白い霜は苦痛からきたもの
20世紀の長い長い歳月
お前の体は外国の勢力に踏みにじられ、腰から二つに裂かれた
今は独裁の抑圧の下で 苦痛に耐え
何も言わずに流す涙
鴨緑江に 豆満江に流れるのか

分断の歴史
終わりの日その日は遠くないと言う
白頭の約束か長白の意志か
祖国の最高峰に登って
優しくささやくお前の声
長白の願い白頭の誓いを今聞く

いまや分断の歴史も
民族の葛藤も21世紀には
誇らしく美しい長白、白頭の名によって
終わるであろう
厳かなお前の宣言
大滝のように波打って流れる
力強く流れる

世界に見せてやりたい
世界に知らせてやりたい
厳かで強靭な韓半島の気性
韓半島の名山の中の名山として
ますます誇らしい
白頭よ! 長白よ!

          ヨベルの年

脱北女性キムハンナ(仮名32歳)が始めて白頭山
登った後、統一を願う心から書いた詩です。
題目は'ヨベルの連帯'がつけました。
* "長白"は"白頭"と同じく"白頭山"をさす。(訳者注)


特別寄稿文
江沢民の朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)訪問と韓・朝関係
キムクワンヨン (ハニャン大教授、アジア太平洋地域研究センター北朝鮮室長)
最近北朝鮮の動向の中で最も際立った部分は外交活動の
積極的な展開だろう。昨年から始められた攻勢的な北朝鮮の
全方位外交政策は、たった1年余で、EU国家の大部分
(フランスとアイルランドとは未修好)と外交関係を樹立し、
アジア地域安保ホーラム(ARF)に23番目の正式会員国として
加入するなど、目に見える成果を出している。特に、昨年平壌で
開かれた南北頂上会談を始めとして、金正日国防委員長は
華やかに国際舞台に登場したのについで、中国、ロシアを
続けさまに訪問し頂上会談を推進してきた。それまで内外の
事情によって国際社会から徹底して孤立、封鎖されていた
北朝鮮が一挙にこれを突破でもするかのように、多方面から
外交を推し進めているのである。

すぐる9月3日から5日間行われた江沢民中国国家主席兼党書記の
訪朝もこのような延長線上に置かれている。勿論、今回の訪朝は、
基本的には先に2回行われた金委員長の訪中に対する答礼形式を
とったのであったけれども、北朝鮮に対して中国がはっきりした
支持表明を出すという具体的な成果があったことに注目する必要が
ある。とりわけ、今回の訪朝が11年目に行なわれた点、韓中修好以後
最初の中国最高指導者の訪朝という点,朝中間に外形的には
親善関係が維持されてきたという点などを考え合わせるならば、
今回の会談の意味は決して小さくない。のみならず、急変しつつある
東北アジアの力学関係に及ぼす影響を勘案するならば、注意深く
見つめるべき面は多い。

しかし、今回の会談は、9月11日米国国防省と世界貿易センターが
受けたテロにより、国際社会は勿論、国内でも注目されず色あせた
側面が少なくない。はなはだしくは今回の会談を単なる答礼次元へと
削り降ろす傾向さえ見られた。その根拠として、発表された合意文の
内容が貧弱であるという点(劉法才中国共産党対外連絡部副秘書長の
9月5日記者会見;"すぐる年5月と1月、また今回江主席の
訪朝など3回の出会いを通して、両国頂上が青少年交流など3項目に
合意した。")、朝ロ頂上会談とは違って共同声明がだされなかった点、
が提示された。

けれども、訪朝団が中国の党、政、軍および経済人など100余名の
大規模で構成されたという点、江沢民自らが今回の訪朝が"成功的で
あったし、訪問結果に満足している。"と評価し、すぐる11年の間世の
中の総てが変わったが"すこしもかわらなかったのは朝中友好関係
だけだ。"と感激したという事実からもわかるように、表面的にのみ
見るべきではない。同時に、これまで行なわれた朝中両国頂上会談の
中では1970年4月周恩来総理の訪朝時に金日成主席との間で"反帝
共同闘争を確認する共同声明"が発表されただけで、その間の
朝中頂上会談では共同文採択がぜんぜん行なわれなかった事実からして、
共同声明発表の有無は、少なくとも朝中間では、それほど重要な要素
ではない。したがって、訪朝の意味をより正確に把握しようとすれば、今回の
江主席の訪朝の裏面と脈略を注意深く見なければならない。


今回の会談における最大の受恵者はやはり北朝鮮である。
 一、北朝鮮は直ちに中国から20万トンの食糧と3万トンのヂイゼル油を
    無償で受けた。今回受けた援助はほんの数百万ドルに過ぎないが、
    今後も続けて食料、肥料、石油、生活必需品など数千万ドルに
    達する無償支援と経済協力の約束を受けたことが判明した。

二、北朝鮮は中国との友好関係を再確認することによって少なくとも
   国際舞台ではもはや孤立無縁な状態でないことを内外に誇示する
   成果を納めた。勿論、かつての"唇歯"、"血盟"関係レベルへの
   復元でないことは明らかであるが、今後両国関係が単なる親善国家関係
   以上になるという点には疑問の余地がない。過去中国の改革解放に対する
   修正主義批判、韓中修好に対する非難などによってもたらされた二国間の
   葛藤の溝は最小限縫い合わされたわけだ。

三、北朝鮮は相次ぐ頂上会談を通じて米国のMDに対して反対する
   中−ロ−北朝鮮合同戦線を構築することで今後展開される米国との会談での
   交渉力を強める効果を獲得した。

四、ともかく金委員長が持続的に開放的な外交活動に力を注ぐ姿を見せることで
  自身の対内外の立場を強める反面、過去の閉鎖的で否定的なイメージを
  かなり払拭させる事ができた。

五、北朝鮮はこの時期にミサイル発射の猶予を約束、三個代表論(全人民を
   代表し文化ならびに経済に対しても中国共産党が責任を負わなければ
   ならないという江主席の主張)[訳者注:三個=先進的生産性、先進的文化、
   人民の根本的利益]に対しての支持を通じて北朝鮮改革解放の暗示等の
   間接的宣伝効果を得た。

中国もまた今回の北朝鮮訪問から少なくない成果を得た。

先ず指摘できることは北朝鮮に対しての影響力確認である。江沢民は
今回の北朝鮮訪問に"身内の面倒を見る"大きな
お土産を準備することにより北朝鮮を実質的に支援する国家が
自分たちだけであることを明確に認識させた。同時に金委員長に
ソウル訪問を間接的に勧めることで朝鮮半島問題解決について格別な
関心を示し、それを通じ1次南北頂上会談に続いて2次会談にも自身が
一定の役割を果たすことを誇示した。

二、これは朝鮮半島に対する中国の影響力増大につながるだろう。
北朝鮮中国間の友好協力関係回復は北朝鮮だけが望んだことでは
なく中国にも切実な要求であった。中国が経済建設に集中するため
には周辺情勢が安定することが必要なだけでなく、戦略的側面からも
朝鮮半島問題に対して地位を保有することで将来の中国の安全が
保証されうるためである。したがって今回の北朝鮮訪問に少なくない
力を注いだ事実は各所で感知される。特に今回の北朝鮮訪問を
主導したのは政府筋ではない党(権力の中心部)であった点から
中国の誠意を汲み取る事ができる。

三、そのような成果は中国の対米交渉力を強める結果を
もたらすだろう。最後に、江沢民個人にも今回の北朝鮮訪問は
メリットとなった。国内的には世界に残り少ない'正統社会主義
国家'である北朝鮮から自身の三個代表論に対しての支持を
獲得することにより15期6中全会で起こりうる反対派(=保守派)の
批判を避けられることは勿論、国際的にも頭の痛い相手である
北朝鮮に影響力のある国際的な指導者としての地位をさらに
模索する事ができるようになったのである。


このような側面にもっとも神経を尖らせるのは当然米国であった。
実際に米国務省は9月4日江主席の北朝鮮訪問を"鋭意注目している"と
論評したが、これは北朝鮮中国関係が10年内でもっとも密着していると
いう観測を反映している。米国は今後中国が北朝鮮という梃子を
手中にした場合中米関係が自国の戦略通りにならない可能性を
憂慮してきた。同時にこれはまもなく再開される北朝鮮米国協調の
障害物がさらにひとつ増える予告だった。その上これは米国の
東アジア戦略が意図どおり展開されないという憂慮を生む要因となる。


結論的に北朝鮮中国関係の強化が東北アジア、より直接的には
朝鮮半島にどのような影響を及ぼすであろうか? 初頭に言及した
ように北朝鮮はいまや外交的孤立からほぼまぬがれた。今回の
会談はここしばらく北朝鮮指導部が精力的に推進した対外政策の
ひとつの頂点という事ができる。北朝鮮に今残されていることは米国、
日本との関係改善だけである。これを指して一部では 
新 北朝鮮−韓国 3角関係の対立の予告編という主張があるが、
これは北朝鮮−ロシア−中国 三国を束ねてみていた過去と同様の
共通理解が存在しないという側面から現実的根拠が貧弱である。
ただひとつ明らかになったことは、今、北朝鮮に外交的にも、
経済的にも少なくない時間と余裕が与えられたという事実である。
これ以上は'がけっぷちの選択'が北朝鮮の唯一の対案ではないだろう。
勿論北朝鮮の選択が平和指向的になるだろう保証はない。
そうだとしても朝鮮半島での安定と平和の可能性はもう少し深まった
といえる。問題はブッシュ政権の対応である。その成り行きは米国に
委ねられている。テロ問題がある程度整理できる幾月かの後の米国の
政策によってその可能性の大きさが決定されるであろう。 ヨベルの年

北朝鮮脱出者インタビュー
ある元教師の北朝鮮脱出手記(2)

(このインタビューは2000年11月、中国エンチ(延邊)で活動している
韓国宣教師と元教師の北朝鮮脱出女性(45歳)の間で行われたもので
ある。安全のため名前は明らかに出来ない。便宜上質疑の形で記録、
整理した。言葉遣いは理解しやすくするため若干修正したが用語表現は
可能な限りそのまま活かした。(編集者注、以下[ ]表示は編集者)
はなはだしい生活苦と疾病難
問:病気になることも多いですか? 答:食べられませんから病気になります。病気になり病院にいっても   薬というものは一粒ももらえず消毒綿ひとつもらうのにも苦労します。   かろうじて自分で稼いで市場に行ってある薬が良いと言えばそれを   買って飲むのですが、これ以上どうしようもない時にだけ買います。   生計も維持するのがやっとですからこのような患者たちはほんの   数日内に殆ど死ぬと思います。治療は出来ません。 問:家は皆ありますか? 答:家は全部はありません。最近北朝鮮では家というものはあまり   必要が無いように思います。家があってもなにになるんでしょう?    食べる物がありませんから親たちは一日に千里、万里、東西南北、   北朝鮮を隅から隅まで駆け回って商いするんです。そんなんで家   なんていうものは必要なく只で一年中外で寝ます。冬の間は   凍え死ぬので、どうしようもなくて一食か二食にして一日寝る料金が   10ウォンするところで寝ます。夏なら一鉢の麺なども食べますが、   冬では一食ぬいても10ウォン払って寝なければなりません。    ですから家などというものは必要なくて寒ければビニールをかぶって   外で寝る暮らしです。そうやって寝ると私のような女性は冷えから   来る病気になるのかひかがみを伸ばすこともできませんよ。こういうふうに   1年中暮らすのですから家があってなにになるんですか。全家族が   飢え死にしたのか、或る家では家があってもどこか行って死んだのか   逃げたのか、通りすがりに見ると家の中に草が1メートルほども   茂っていました。
   本当にあまりにも馬鹿らしいことです。私は本当に世界に公表して   世界の世論を喚起して北朝鮮のこんな現実、こんな政治を終わらせ   たいです。これ以上は四足も生きていけない、まして人間が生まれて   健やかに生きることを願わないはずがないのに、人が生きるこの世の   中がどうして・・・・、もうこれ以上言葉が出ません。 問:そちらではちゃんと暮らしている人も少しは居るのではないですか? 答:ええ、資金が少しあってうまく商売をしている人達も居ますが、   北朝鮮の人口から見れば本当に少しに過ぎません。このような   人達にお金か食料を借りようとしても一文も助けてくれません。   友達や隣の家の人はさておいて自分の兄弟両親でも助けず、   あれば土の中やそんなところに埋めておきます。それには理由が   あります。なぜならその人達もそのお金をとても苦労してためたので   無い人に共産主義的に貸してしまうと、その人達がいつ飢え死に   するか判らないからそのお金を返して貰えないのは火を見るより   明らかですよ。そうなると1銭1文貸してやる道理はなくて、また1銭   などあったとしても何時自分も飢え死にするかも知れないと思うから   ですよ。両親子供の間も兄弟の間もないこんな、犬、豚とおなじ   世の中になりました。
問:どうにかして食べていくために農業をすれば穀物が出来るはずだし、   せめて犬を飼ったり鶏を飼えば食べる事ができないかと私たちは   思うのですがそれはだめでしょうか? 答:それはだめです。人間でも草も食べられない暮らしで家畜を   どうやって食べさせますか?私が小さい時を思い出すと、家は家族が   3、4人でしたのでその残飯で犬を一匹ずつは飼っていたと思います。   ところが最近は人間も飢え死にするような暮らしに犬のような   家畜は考えられません。我々の村をみなひっくり返しても犬一匹、   動物一匹もいないという暮らしです。それで人々は仕方なく山里に   分け入って国家が許さない畑を木を伐って拓いて「ちょっと種を   蒔いて食べよう」とするのですが、何かを食べてこそ力が湧いて   木も伐り畑も鍬きおこす事が出来るのですから。それで時折途中で   死ぬという話です。どうにもこうにも出来なくて・・・・。 問:聞くところでは地下室でも豚を育て便所(室)でも豚を   飼っているそうじゃないですか? 答:中にはお金がある人もいます。そんな人たちも外では家畜を飼えません。   油断のならない世の中では一瞬のうちに盗まれてしまうのですよ、   だから外では飼えず家の中で、たまにはベランダで犬を飼っている   人々もいます。だがそういうことは殆どないです。多くの人々が   飢え死にすることを防止出来ません。 問:どんな人々がそれでもそこそこに生きているのですか? 答:4つのグループが一番良い暮らしをしています。4グループの最初には   幹部達が属します。この人達は1年中働くというようなことは一つも   なくて"人民達が働ける事が自分の仕事さ"と大きい声を威勢良く   張り上げます。電話一本でその区域内のあらゆる物が全て自分の物で   良い物はみな選り取りみどり食べることが出来ます。これだから知識は   なくてもお金を儲けた人々は地位をお金で買います。こんな政治を   しては駄目です。    その次2番目としては漁師達が上手く生活しているとみます。   我々の青年時代をみるなら、中国と朝鮮の関係が良くて中国から   来た石油で大きな船が休まず運航していて魚を採ったので、人民達も   魚を1年中食べることが出来たのですが、今はどうしたのか北朝鮮経済は   殆ど停滞しているのと変わりません。大きな船が1年に1回も運航出来なくて   遊んでいます。それだから小さい船や丸木舟を動かして釣り針で釣ります。   せいぜい麻袋に1、2袋、又バットの様な魚缶で1、2杯採るだけだから   海辺へ住んでいる人達も魚を食べるという考えさえ持てなくて、肉(魚)の   値段は天井知らずに上がったのです。それでも人間が生きようとするなら   肉を時々食べなければ生きられません。海辺に住む人達も魚の頭、   内臓まで全て採りだして売る暮らしです。一番下層の人達が余りにも肉を   食べたくてがまんできない時は魚の内臓を買って食べます。そのようにして   肉が食べたくなるのを抑えつけるのです。スケトウダラ一匹の値段が   20ウォン〜30ウォンだから漁師達が1缶、2缶採ってスケトウダラ一匹   内臓だけ売ってもいやになるほど白米を食べて肉もいやになるほど   食べることが出来るんです。    その次の3番目は農夫とみます。国家では1年中休むこと無く働けば、   やっと死なない程度の穀物とお金をくれます。それだから農夫達は   自分で副業をしなければなりません。米を貰えればそこから糠もでて、   そこで豚も1.2匹飼うし、その次に山里に住んでいる人達はもう少し   有利に畑をすきおこします。    その次の4番目の人々は寡婦(訳者注:未婚女性の意、以下同じ)で、   この社会がますます滅びようとしているからか、いい暮らしをしています。
問:どうして寡婦がいい生活をしているというのですか? 答:北朝鮮の人口比率では女子が65%いて男子がその残りといいます。   結婚する年頃をみれば実際には男子1名あたり女子2名ずつになる   ので結婚できない女子が多いです。それで一人でいる女子達が   多いのです。これをすなわち寡婦といいますが寡婦達の生活をみれば   大体において能力があります。人物も良く口も立ち男子達を惹きつける   技術があると思います。それだから北朝鮮の男子達が話すことに、   自分の奥さんが少しでもしくじると「おい、そんなものと暮らすのか、   そんなのちぇっと蹴飛ばしてすてろ。あっちの大きな街路に出ていけば   女子達が一杯いるので又もう一人捕まえろ」といいます。これだから 寡婦達の水準が良いということです。男子達というのは息子は   自分自身の息子が美しくて奥さんは他人の奥さんが美しいということで   寡婦達の家に訪ねて来るということです。(続く)ヨベルの年

お知らせ/連絡先
・イジンスク院長の動向及び問安の手紙
 ヨンビョン大学付設民族文化教育院イジンスク院長は
会員の皆様に送る問安の手紙3通目を送ってきました。
既存の支援事業の為にいつもの通り忙しくされながら
最近では'ユンドンジュ文学賞'の受賞者(朝鮮族中学生)を
韓国に招致する事にも力を入れていると言います。

・ヨンビョンに物資を送ること
 ヨンビョンの朝鮮族の為に皆様の協力を求めます。
本、学用品、衣料等。送ろうという意向の有る方は
事務局まで連絡して下さい。事務局では現在 毎日 
国民日報2-3部をヨンビョンに送っています。韓国の
新聞なり雑誌等は朝鮮族の人々の韓国に対する高い
関心と興味を解消せしめるだけでなく韓国語学習の為の
材料として活用されていると言います。

・朝鮮族の学校'1+1支援方法'
 ヨンビョンの朝鮮族の小学校と北朝鮮の小学校が 姉妹関係を結ぶようにして我々の支援物資の半分を 朝鮮族の小学校が北朝鮮の小学校へ間接的に 支援する方法を模索しています。支援物資は学用品を はじめ教育機材等様々です。詳細は事務局に 連絡して下さい。 ・会員拡大をお願いします  特に小、中、高校生会員を歓迎します。併せて会員の 皆様には会費をお納め下さいますようお願い 申し上げます。会費は振り込み用紙(振り込み用紙が 必要な方は事務局まで連絡下さい)で又はオンライン 送金でもよろしいです。 ・ホームページ http://www.jubileekorea.or.kr/ を積極的に利用して下さい。  ホームページの掲示板を通して活発な意見交換が  行われることを期待します。 ●‘ヨベルの年’とは  ‘ヨベルの年’は旧約聖書からでてきた言葉です。 全ての人が抑圧されないで自分の権利を共有することの 出来る年を‘禧年’(訳者注:‘ヨベルの年’と訳しています)  呼びます。我々はその全ての人の範囲に北朝鮮難民も 含まれていると考えました。
●連絡先  
発行人: パクソンジャ
編集: ヨベルの年連帯事務局
発行所: 北からの難民を考えるヨベルの年連帯
ソウル市ソンパ゚区シンチョン洞17-2 シヨンアパート64-101
代表電話: (02)419-2265(FAX共用)、(02)423-8495
発行日: 2000年12月31日
URL: http://www.jubileekorea.or.kr/


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