2012年9月9日(日) 第18回日韓合同修養会主日朝礼拝 

「3・11の絶望に抗し」

  ヨハネの黙示録 8:6~13   讃美歌21 7(1~3) 511 474 27 交読詩編51編7~15
  西片町教会牧師 山本裕司


 第18回日韓合同修養会が、ソウルから愛する兄弟姉妹を迎えて、昨日より始まっています。昨日の開会礼拝で朗読されたのは創世記の天地創造物語でした。これは聖書全体の最初の言葉です。そして2日目のこの朝与えられた御言葉はヨハネの黙示録です。これは聖書全体の最後の文書です。今回の修養会においてこの両者をもって、3・11後を生きる私たちへの神の言葉としたいと願いました。聖書両端の創世記とヨハネ黙示録は深い結びつきを持つと思うからです。昨日も読んだ創世記3:1以下には、堕落の物語があります。蛇が女を原罪へと誘惑します。蛇はそれまでは立って歩けたらしい。しかし神は人を惑わした蛇を呪い生涯這うものとしました。後に楽園から追放されたこの蛇が、這い回った跡から、植物が生えたという伝説が生まれました。その草の名こそ、先ほど朗読頂いたヨハネ黙示録8:11に出てきた災厄を呼び起こす星の名「苦よもぎ」*1です。英語の聖書には、Wormwood(ワームウッド)と訳されています。まさに蛇の木です。


*1  ギリシャ語でApsinthos(アプシントス)




 お気づきと思いますが、この黙示録の中の「苦よもぎ」こそ、ロシア語で「チェルノブイリ」のことだと流布されました。しかし正確には、このチェルノブイリとは、確かにヨモギの一種ですが「苦よもぎ」そのものではないそうです。*2それにしても、黙示録8:10~11の預言は、1986年4月26日と、2011年の3・11を経験した私たちには、余りにも身につまされるのではないでしょうか。「第三の天使がラッパを吹いた。すると、松明のように燃えている大きな星が、天から落ちて来て、川という川の三分の一と、その水源の上に落ちた。この星の名は『苦よもぎ』といい、水の三分の一が苦よもぎのように苦くなって、そのために多くの人が死んだ。」


*2  1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故時に、この地名を英語の「苦よもぎ」にあたるWormwoodと訳したせいで、黙示録と一致する、という話題が広まったらしい。チェルノブイリと苦よもぎはともに、痩せた土壌でも育ち現地に広く自生している。




 チェルノブイリ原発の横を流れているため猛烈な放射能汚染をしているプリピャチ川は、3500万人が利用している貯水池が近くにあって、いつ水道水が汚染されてもおかしくない状態です。*3 同様に、福島第一原発から漏出した放射性物質は河川に多量に落下し、福島を横断する複数の川の土壌から高濃度汚染が検出されています。*4 2011年3月23日に、都内の浄水場の水から、やはり高濃度の放射性ヨウ素が検出されました。その時、東京では一夜にして水のペットボトルが売り切れました。*5 まさに、黙示録の預言の通り、私たちの生命線である水が「苦よもぎ」のように苦くなってしまったのです。しかもこの水源汚染は、黙示録では7つの内の1つの災いに過ぎません。8:8~9に記される海洋汚染に関して言えば、今夏、福島原発から20キロ圏内の海域で採取したアイナメから、過去最大値となる25,800ベクレル/㎏の放射性セシウムが検出されています。*6 その他、大地も大気も動植物も多くの食料も汚染されました。蛇の誘惑に負けて、禁断の木の実(核)を食べた私たちは、爾来、蛇が縦横無尽に這い回った跡から茂る「苦よもぎ」(Wormwood)に脅かされ続けているのです。*7


*3   広河隆一『チェルノブイリから広島へ』10頁

*4   ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図6 川でなにが起きているか」2012年6月10日、「川」という道によって、予想外に遠くまで放射性物質は移動し溜まり、汚染を拡大させていると言われる。

*5  現在も微量だが東京の水道水から放射性セシウムが検出されている。

*6  2012年8月21日、新聞報道による。水産庁によると、これまで魚類の最大値はヤマメの18,700ベクレル。海水魚に限れば昨年4月に採取されたコウナゴの14,400ベクレルが最大値だった。政府による食品の放射性セシウム安全基準値は100ベクレル以下。

*7  ワーム【worm】には以下の意味もある。「コンピューターで、自己増殖を繰り返しながらファイルを破壊したり情報を盗み出したりするプログラム。」



  
 この放射能汚染の深刻さは、既に歴史が証明しています。95歳の内科医肥田舜太郎は、67年間、広島、長崎の被ばく者と関わってきました。彼は「これから福島で広島・長崎と同じことが起きる」と断言します。福島原発から出ている放射能は、広島・長崎で使われたのと同じウランとプルトニウムに由来するからです。*8 広島・長崎では直接的な外部被爆から免れた人たちも、後に診断の難しい不思議な病気に罹りました。それは呼吸や飲食によって、体内に放射性物質を取り込んだために起こる内部被曝によるものだと肥田医師は診断します。その病気の一つに「原爆ぶらぶら病」と呼ばれるものがあります。被曝者の中に猛烈な倦怠感に悩まされ体が動かなくなってしまった人がいました。あるいは、ずっと体調が悪い上、50年、60年たって癌や白血病になって死ぬ被曝者を医師は多く見てきたのです。戦後、広島の産婆さんの間で奇形の多さが評判となりました。原爆爆発直後の急性被爆だけでなく、低線量被曝による晩発性疾患や遺伝への悪影響が出ることを、肥田医師は肌で感じてきたのです。*9


*8  肥田舜太郎『内部被曝』16頁、福島第一3号機では、プルサーマルと呼ぶ、ウランとプルトニウムの混合・MOX燃料が使用されていた。3号機は、2011年3月14日に、核爆発の可能性も指摘される大爆発を起こした。

*9  前掲書22~23頁、最大の原因物質は、長寿命セシウム137だと考えられるが、福島では広島原爆の170倍が放出されたと言われる。また彼は、1979年3月28日のスリーマイル島の原発事故の経験から、福島で起こることは予想出来るとも書く。スリーマイル島は「レベル5」に止まり、福島の「レベル7」よりは軽かったが、後に島付近の新生児死亡率が激増した。(30~31頁)たとえ事故がなくても「原発がある滋賀県玄海町では、子どもの白血病の発症率が全国平均に比べて10倍以上高いことが、政府の資料から明らかになっている」(21頁)のだ。




 映画『チェルノブイリ・ハート』(2003年)では、チェルノブイリ事故から16年後の被曝者たちの深刻な事態を描いています。国土の99%が汚染されたベラルーシの乳幼児死亡率は、他のヨーロッパ諸国に比べて3倍も高い。また肢体不自由で産まれた子どもは事故前の25倍、内臓に異常もって生まれる子どもが大勢いる。当時、胎児や小児だった人たち、事故処理者*10 の子どもたちが現在産む赤ちゃんで、健康な子は僅かに10~20%であるとすら報告されます。*11 既に、3・11以後、日本各地において、放射線に敏感な子どもたちに初期の被曝症状が現れていると言われます。下痢や、口内炎、そして鼻血です。女性の脱毛症状も報告されています。*12


*10  ETV 特集「ルポ 原発作業員〜福島原発事故・2年目の夏」(2012年8月19日放映)によると、今も毎日、被曝覚悟で、3000人の作業員が福島第一の事故収束作業にあたっている。厳しい作業現場であり1日で数ミリシーベルトを被曝する者も出ている。その6割が地元福島の人だ。故郷が放射能に汚染され、原発で働く以外に生きるすべがないからだ。その番組で、1999年に白血病で死亡した原発作業員のことが取り上げられた。その男性は突如ひどい疲れを訴え仕事に出られなくなり、ひと月後死亡する。12年間で74ミリシーベルトの被曝をしたが、5年間で100ミリシーベルトの法令限度以下であり、東京電力は責任が無いと回答をした。しかし労働災害として申請したところ認められた。このような事例は氷山の一角に過ぎないと言われる。多くの作業員が発病の恐怖の中で、自分たちを故郷を奪った東電のために文字通り身を削って働いている。

*11  死産、流産、不妊も増加しており、また、心臓・血管系の病気、神経障害、内分泌、免疫系の障害、加齢の促進、寿命の短縮などが高汚染地区の子どもや事故処理者に観察される。

*12  矢ヶ崎克馬、守田敏也『内部被曝』(岩波ブックレット)14~15頁、そこには、町田市や多摩市に暮らす人々に起こっている3・11以後の「原因不明」の大量の鼻血、抜け毛、下痢や嘔吐、口内炎が報告されている。肥田舜太郎『内部被曝』91頁、同書の解説で竹野内真理はこう自らの経験を報告をしている。「沖縄に避難する直前の、2011年3月15日、午前、放射能が最も都内で濃厚だった時間帯に、1歳4ヶ月の息子をおぶって自転車で東京・港区三田の街中を走り回った。それからひと月が過ぎた頃から、健康優良児であった息子が高熱を出すなどひどく病弱になった。同時に、母親も体調を崩すようになった」と言いつつ、彼女は「福島の子供たちは今からでも強制疎開すべき」と提言する。(190頁) 




 では、これほど深刻な低線量内部被曝の問題が何故、広く知られることがなかったのでしょうか。それは、これまで、日本でも世界でも、放射線による晩発性の病気は「ないこと」になっていたためだと医師は言うのです。*13 原爆が、もし何十年にも渡り、何十万人という民間人を苦しめる非人道的な兵器であるとなれば、核による世界支配を求める米国に都合が悪いことになります。日本も米国の「核の傘」に守ってもらうために「被ばくの実態は軍事機密」としなければならなかったのです。*14 米国や旧ソ連でも、低線量被曝問題を取り上げようとすると圧力がかけられました。核実験や原発の通常運転や事故によって漏出する放射能と共に、低線量被曝の被害が証明されると、彼らは核兵器も原発も造れなくなるからです。*15 福島原発事故以後、政府がテレビで繰り返した言葉は「人体にただちに影響はありません」でした。しかし国はそれに続いて、(広島・長崎・スリーマイル島・チェルノブイリ同様に)「後々、恐るべき影響が出てくるでしょう」と言わねばならなかったはずです。しかし歴史的に低線量被曝、内部被爆を無視してきた政府は、前半の言葉だけを垂れ流し、警戒すれば避けられたはずの被曝を自国民に与え続けてきたのではないでしょうか。*16


*13  前掲書128頁

*14  前掲書95頁

*15  前掲書110~112頁、また『チェルノブイリ・ハート』(93頁)にはこうある。ベラルーシのバンダジェフスキー医師が、セシウムが遺伝的障害や深刻な健康障害をもたらすことを公表した。しかし低線量放射線は健康に影響はないとする政府は、彼が入学らすことを公表した。しかし低線量放射線は健康に影響はないとする政府は、彼が入学試験の賄賂汚職をしたという容疑で禁固8年の刑に処したのだ。翻って日本では2011年8月11日付で「朝日がん大賞」に山下俊一が選ばれた。彼は福島の高汚染地区に行って「放射線の影響はニコニコ笑っている人には来ません。」「汚染濃度100μS/hを超えなければまったく健康に影響を及ぼしません」と保障した。筆者は、世の東西を問わず権力とはこういうものだと嘆息しつつ、現在の愚策のつけを背負うのは未来世代なのだ、と怒る。それほど、政府や原子力推進派は、低線量・内部被曝の存在が明らかになることを恐れているのだ。
 これら肥田医師などの渾身の指摘は、最近放映されたNHKスペシャル「黒い雨~活かされなかった被爆者調査~」(2012年8月6日)によっても裏付けられる。それによると、アメリカの研究機関ABCC(原爆傷害調査委員会)による、原爆投下直後に降った「黒い雨」とその人体への影響についての詳細なデータが最近、67年振りに表に出された。何故、長くこの調査が明らかにされなかったのか。それは「黒い雨」に象徴される残留放射能と内部被曝の影響を認めることは、戦後、核兵器と原子力の平和利用を推進することによって超大国の道を歩むことの出来る米国にとって、不都合であったからだ。またABCCを引き継いだ日本の放射線影響研究所(放影研)も同様に「黒い雨」のデータを隠蔽する。この放影研の判断を根拠に、政府は被爆者の救済にあたってきたが、「原爆症」認定において内部被曝の影響を認めようとはしなかった。そのため数十年にわたって原因不明としか診断されない病気に苦しんできた被曝者たちは、放置されてきたのだ。その理由こそ、国が、力の源泉たる核を、人道的理由によって使えなくなることを恐れたためである。だから米国は以下のような発表を繰り返してきたのだ。「ヒロシマやナガサキでは原爆で死ぬべきものは死んでしまい、9月上旬において原爆放射能のために苦しんでいるものは皆無」1945年9月6日(GHQ発表)、「残留放射能による被害なし。生存被爆者は全て健康」(米国が原爆投下後23年後に提出した国連原爆白書)

*16  放射線リスク評価の「国際的権威」とされているのは国際放射線防護委員会(ICRP)である。この組織が、米国のリードによって、核軍拡・原発推進派の主張する「放射線リスク受け入れ」を理論化してきた。ICRPの立場は「経済的・社会的要因を考慮して合理的に達成できる限り、放射能を防護する」(1990年勧告)というものだ。この場合の「経済的・社会的要因」の考慮とは、要するに核戦略と原子力産業を妨げないレベルに、防護ラインを設定するという意味だ。それは生身の人体への放射線リスクを科学的に評価するものではない。ところが、現在、世界中の医療機関、教育機関、原子力機関が、このICRPの考えに従っている。福島原発事故での政府が、被曝放射線限度値を極めて高く設定出来たのは、ICRP勧告に基づいているからである。被曝限度値を高くすれば、政府と電力会社の事故に対する経済的・法的責任は軽くなる。その目安をしているのだ。ICRPはこれまで内部被爆の研究を意図的に排除してきたが、それを批判するヨーロッパ放射線リスク委員会(ECRR)は、内部被爆を外部被爆の平均600倍の危険と考えるべきだと指摘している。ICRPは、1945年~1989年までに、世界で放射線によって生命を失った人の数を、117万人とするが、ECRRでは、6500万人と推計する。それは内部被爆を勘定に入れるか入れないかの違いなのだ。(『内部被爆』岩波ブックレット参照)




 これまで述べてきたことが事実なら、原発事故から2年目の秋を迎えたこの日本は今、「被曝による健康被害の潜伏期」(藤井創)*17  のただ中にあるということになります。特に藤井氏は、人類史上初めて、人口の密集する大都市圏にも高濃度の汚染が及んでいることを勘案する時、3・11から20年後の日本に戦慄を覚える、と恐れます。そして、現在「人々が通常の生活へと回帰させられる陰で進んでいるのは、首都機能や大手企業本社の西日本への移転。皇居も京都へ」との動きが既に始まっていると指摘しています。*18


*17 「CNFEニュースレター」№1,2012年8月1日「原発震災2年目の試練~潜伏期という日常の中で」、さらに藤井氏はこう続ける。「低線量被曝の影響を甘くみてはいけない。潜伏した病は必ず顕在化してくる。チェルノブイリ原発事故から7年後、ベラルーシでは20万人が中絶した。20年後、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアでの健康被害者は700万人を越えた。…日本はこれから20年のタイムラグでチェルノブイリを後追いしていくことになる。」

*18  雑誌「AERA」2012年6月18日号には、「謎の『黒い土』拡散マップ」との記事があり、道ばたに堆積する「黒い土」から多量の放射性セシウムが検出されていることを指摘している。それは福島だけでなく、以下のように東京都でも検出されている。その値は驚くべき高さであり、厳重管理が必要なレベルであるが、西片町教会近隣で特に顕著であることが分かる。

東京都
 文京区向丘
 文京区本郷(東京大学)
 文京区本郷(東大附属病院)
 千代田区千代田(皇居)
 千代田区千代田(皇居桃華楽堂前)

Bq/kg(放射性セシウム)
47,808
60,581
52,007
77,547
84,611




 そうであれば、今や、私たちは、黙示録の時代に突入したと言わねばなりません。パトモス島に流刑の身のヨハネは、迫害下の教会に向けて、神と敵対勢力との大決戦が近いことを預言しました。時代は、ローマ皇帝ドミティアヌス治世の紀元95年頃です。既に、見せかけの繁栄とパクス・ロマナ(ローマの平和)の正体が暴露される予兆が現れていました。無敵だったローマ陸軍が、紀元62年、パルティア軍の騎兵隊に惨敗しています。68年には、皇帝ネロが自殺し、政情の乱れと帝位簒奪が繰り返されていました。紀元70年、熾烈を極めたユダヤ戦争の結果、都エルサレムはローマ軍の手に落ち、永遠と覚えられたユダヤ神殿が戦火と共に崩壊するのもこの時代です。さらに、79年、ヴェスヴィウス火山が大爆発を起こし、飽食の限りを尽したポンペイが一夜にして消滅し、ナポリ湾一帯の富が失われました。陽光は長い間暗雲にさえぎられ、暗黒が地をおおい、人々は飢餓に苦しめられるようになるのです。*19 それでも超大国の威信を保持するために力と富に依り頼む帝国権力に抗して、キリストのみに信頼する者の勝利を約束し励ますために、ヨハネは黙示録を書くのです。


*19 『新共同訳新約聖書注解』Ⅱ、中村和夫「ヨハネの黙示録」504頁




 ヨハネは言います。「わたしはまた、もう一人の天使が生ける神の刻印を持って、太陽の出る方角から上って来るのを見た。この天使は、大地と海とを損なうことを許されている四人の天使に、大声で呼びかけて、こう言った。『我々が、神の僕たちの額に刻印を押してしまうまでは、大地も海も木も損なってはならない。』…」(ヨハネの黙示録7:2~4)、裁きのラッパが吹き鳴らされる終末の破局を前にして、御使いが大嵐を起こして罪に汚れたこの世を破壊しようと待ちかまえています。その時、東から一人の御使いが飛び込んできて、神の僕たちの額に刻印を捺してまわる。彼等が最後の審判を無傷でくぐりぬけるために。この「神の僕」とは誰のことでしょうか。それは、信仰の故に、核武装による平和と、核による繁栄を生きるよすがとしない人のことではないでしょうか。また、どのような汚染のただ中にあっても、なお主の憐れみを信じるが故に、生きる望みを捨てない者のことです。そうであれば、東からの御使いが神の僕たちに捺す刻印には「希望」と、あるいは「命」とあるかもしれない。何よりも「イエス・キリスト」の御名が彫られた判子であるに違いありません。また、一人の御使いが「悪魔でもサタンでもある、年を経たあの蛇、つまり竜を取り押さえ、…もうそれ以上、諸国の民を惑わさないようにした。」(黙示録20:1~3)ともあります。地を這い回り「苦よもぎ」(ワームウッド)で世界を満たした誘惑の蛇が、ついに封じ込められる。つまり、これからは「苦よもぎ」を一本、また一本と、摘み取る新しい時代が到来するのです。この合同修養会の朝、大胆にも私は、この新しい時代を呼び覚ます、御使いこそ、私たちの日韓両教会のことと読みたいと願います。
 「福島は、3つの原子炉のメルトダウンによる大量かつ永続的な放射能漏れと、4号機内にある原爆5,000発分を抱える核燃料プール倒壊の危機。…チェルノブイリがレベル7だとすると、フクシマはレベル28と言いうる」*20 。この過酷な現実に抗して、なお私たちに将来がある、そう言えるとしたら、まさに「新しい天と新しい地」(黙示録21:1)の出現を見るような、根本的「悔い改め」(方向転換)が私たちに求められるのです。黙示録によれば、権力と繁栄を謳歌する人々に向かって、一羽の鷲が大声で叫びます。「不幸だ、不幸だ、不幸だ」(8:13)と。私たちはそうではなく、主にある「幸い」の道を歩むのです。己の被造物としての身の程を知り、支配と搾取ではなく共存する命の道を、そのために環境循環型エネルギーを選び、質素節約の道を歩む、私たちでありたい。そのようになれるように祈りましょう。


*20  前掲「CNFEニュースレター」藤井創




 祈りましょう。  主なる神様、世界崩壊の兆しを見たヨハネがなお終末の日の希望に生きたように、私たちにも、人のもたらした絶望に勝つ、あなたの希望を見せて下さい。そのために、聖霊によって、あなたの御使いとならせて頂き、救いの御心をこの地に実現していく、私たち、日韓両教会とならせて下さい。




・引用出典は、日本聖書協会『聖書 新共同訳』より 。

聖書 新共同訳: (c)共同訳聖書実行委員会  Executive Committee of The Common Bible Translation
           (c)日本聖書協会  Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988



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