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1997年 月 日 「主は錬金術師のように」

1997年 「主は錬金術師のように」

  説教者 山本裕司
  (ローマの信徒への手紙 1:23)

滅びることのない神の栄光を、滅び去る人間や鳥や獣や這うものなどに似せた像と取り替えたのです。 (ローマの信徒への手紙 1:23)

 「取り替えた」、これは激しい言葉です。根本的に取り替えてしまう。質的に異なるものに交換してしまう。神の栄光をです。滅び去るものにです。真の神を捨て、地上のものを神とした。するとどんなことが起こるのか。恐ろしいことが起こった。「自然の関係を自然にもとるものに変え」(1:26)、男と女の関係が逆転してしまう。「あらゆる不義、悪、むさぼり、悪意に満ち、ねたみ、殺意、不和、欺き、邪念にあふれ」(一・二九)る。つまり、信仰的倒錯、霊的不自然は、即、性の倒錯、心の不自然に及んだ。そして人間関係は破壊される。そう使徒パウロは言うのです。

 『神曲』では、まさにそのような倒錯、逆立ちの地獄絵が繰り広げられています。生前、錬金術の罪を犯した者に対しては、皮膚が疥癬にかかって身悶えせずにおれない裁き。つまり、卑金属を貴金属に変える「貪り」(1:29)は、逆に、自分の玉の肌が卑しめられる裁き。これは単に死後の裁きを描いているのではないと思います。倒錯の罪によって、錬金術と逆のことが「今」の私たちの身に起こる。美しいはずの家族が最も醜くなり、ほっておいても生き生きとしているはずの子供の魂が死人のように
萎える。人が、神を神として崇めなかった時、どんなに「不自然」になるかが表現されているのです。

 ではどうしたらいいのですか。この卑しめられた自分をどうしたらいいのですか。主に錬金術師になって頂くのです。卑金属を貴金属に変えるように、私たち罪人を、神の子に変えて頂く他はないのです。しかしそのためには、激しい力が必要でした。子が逆子(これもまた暗示的。頭が上なのに「逆子」と呼ぶ!)になったことがあります。医者は手刀を作って、妻の腹を渾身の力を込めて押す。二度失敗し、これが最後だと言われた三度目で、赤子は回りました。力が必要なのです。私たちが回るためには。御子イエスが裸にされ、茨の棘が刺さり、この上なく美しい肌がこの上なく醜くされる。神の子が罪人とされる。それほどの大いなる倒錯があった時、私たちはくるっと回る。神に造られたままの自然の美しさに帰ることができる。

 ダンテがついに地獄の底の底に降った時の体験。悪魔大王の脇腹にしがみついて、毛から毛を伝わって降った。ところがダンテは途中、目眩のするような不思議な体験をする。それは、下に下に降っていると思っていたら、いつの間にか、上へ上へと上っているのです。上下が逆転している。「どういうわけだ」と叫んだその時、案内者が答える。「悪魔大王の腰のあたりこそ、地球の中心。そこを境に、重力が反転する。その時、下にあったものは上になり、上にあったものは下になったのだ。」これもまた真に暗示的です。私たちは、ダンテが描いたような生き地獄を降る。自らの招いた裁きによって。高みにいたはずの誇り高き自分が、その試練に合って、どんどん降って行く。とめどもなく。これが裁きだ。貪りと高慢の裁きだと思って、抵抗のすべもなく果てしなく落ちていく。しかしその落ちていく、落ちていくと思っていたことが、上へ上へと実は上っているのであります。ある神学者は言いました。「裁きは恵みであり、恵みは裁きである。」地上の宝が取り去られるにつれ、私たちは神の富に近づいているのではないか。ここにも新たなる逆転が続き起こる。神の憐れみによって。

 そうやって、ついに地獄を脱出して地球のあちら側に出た時、東から朝日が昇ったと、ダンテは描く。穴を降る前は、太陽が沈みかけていたのに、一気に朝になった。闇から光へ反転する。その朝とは、復活日の日曜日の夜明けだったと、ダンテははっきり書くのです。倒錯の倒錯は復活に至る。私たちの人生も、このダンテが歩いた復活への道を確かに歩んでいるのであります。主に導かれて。





・引用出典は、日本聖書協会『聖書 新共同訳』より 。

聖書 新共同訳: (c)共同訳聖書実行委員会  Executive Committee of The Common Bible Translation
           (c)日本聖書協会  Japan Bible Society , Tokyo 1987,1988




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